今日の日記

2003年2月2日
ある日、道を歩いてて石に躓いた。

小さな石。

誰も躓く人は居なかっただろう。
人々は躓いた僕に嘲笑いを向ける。
だけど・・
これは出会いだと思った。
僕と彼との出会いだと僕は確信した。

小さな石。

「はじめまして」
そう語りかけて、手の中に。
片手に収まるその姿はあまりに小さくて微笑んだ。
彼の場所は決めてある。今、決めた。
居心地はどうだい?
「これからよろしく」
そう言って、僕が一番わかる場所。

胸ポケットに彼を入れた。

喜怒哀楽を共にして、一緒に過ごす日々。
ただの小石だと馬鹿にするな。
お前たちに何が判るというんだ?
あの日、あの時に彼は僕を呼んだのだから。

誰にも気づかれない孤独を知ってるか?
彼が何も語らないただの小石と思うならば、
そう思っていてくれて構わない。

誰にも理解されない苦悩を知ってるか?
僕がおかしくなってしまったと思うならば、
そう思っていてくれて構わない。

季節は幾度も過ぎて、何度目の春だろう。
僕は彼に幾多の世界を見せた。
満足してくれたように彼は小さく笑った。
あの日、彼は僕を呼んで最後の頼みごとをした。

「最後、此処で」

街が一望できる桜の木。
その木の根元に彼は置いてくれと頼んだ。
僕の胸ポケットから彼を出した。
掌に収まる姿は出会ったころと変わらなくて、
思わず流れた涙は彼を濡らす。

さようならは言わない。此処に彼はいるのだから。
いつでも僕を見ていてくれる。

桜の木の下、彼はいつでも此処にいる。

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